
現地に人を置き、体制も整えたのに、商談が思うように増えない。原因は予算ではないことがほとんどです。国内で通用したやり方を、そのまま海外に持ち込むと、進出先ではかえって足を引っ張ります。この記事では、避けられる3つのつまずきを整理します。
まず、争いのない事実から始めます。海外には、お金の動く大きなBtoB市場があり、御社の競合はすでにその中にいます。製品に力があるなら、海外で通用しないはずがありません。問題は、そこにどう入っていくかです。
それでも海外事業が伸びないと、本社はわかりやすい原因を探します。予算が足りない、人が足りない、時間が足りない。しかし、つまずいている会社の多くは、そこが原因ではありません。現地法人も、担当チームも、国内なら商談を生めるはずの予算もある。足りないのは「動き」です。
数字も同じことを示しています。JETROの調査では、海外に出た日系企業で現地の営業利益が黒字の見込みは66.5%にとどまります。裏を返せば、約3社に1社は進出先で黒字化できていません。すでに参入を決め、現地で人を雇った会社の多くが、まだ利益を出せていないということです。問うべきは、海外に出るかどうかではありません。国内で回っていた仕組みが、なぜ現地では空回りするのか、です。
答えは、頑張りの量ではなく、構造にあります。海外でつまずく会社には、共通する3つのパターンがあります。どれも国内では正しいやり方で、進出先ではそれが評価されない、というだけのことです。特別なことは一つもありません。
問うべきは、海外に出るかどうかではない。国内で回っていた仕組みが、なぜ現地では空回りするのか、だ。
3つのパターンに入る前に、準備の重さを確認しておきます。海外に出て黒字化するまでには、時間がかかります。JETROの調査では、現地で黒字化できているのは約3社に2社で、中小企業に限ると約6割です。準備が甘いまま出た会社ほど、この待ち時間の間に力尽きます。
この時間の長さを、そのまま受け止めてください。海外事業は、成果が出るまでにコストが先行します。だからこそ、間違ったやり方で過ごす1四半期は、単なる誤差ではありません。もともと長い回収期間を、さらに削っていきます。
3つのパターンが痛いのは、このためです。訴求のズレ、合っていないチャネル、現地の買い方に逆らう営業。どれも、その活動の費用を無駄にするだけでなく、本社がすでに気にしている時計の針を、余計に進めてしまいます。
これは海外をやめる理由ではありません。予算を広げる前に、仕組みを現地に合わせて整える理由です。多くの会社は、その順番が逆になっています。
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業の海外展開に関する調査」(2024年)
最初のパターンは、いちばん多く、いちばん軽く見られています。現地化を翻訳の作業だと考えてしまうのです。国内向けの資料やサイトを翻訳会社に渡し、きれいな現地語にして出す。言葉は正しい。それでも現地の反応は鈍い。すると「現地の買い手は保守的だ」と結論づけてしまいますが、実際には、現地向けに作られた提案を、買い手は一度も見ていません。
海外でつまずいた会社が挙げる要因も、ここに集まります。信頼できる現地パートナーが見つからない、現地とのコミュニケーションに不安がある、海外向けのPRのやり方がわからない。いずれも製品の問題ではなく、売り方と伝え方の問題です。
大事なのは、翻訳と現地化の違いです。翻訳は、言葉を置き換えます。現地化は、現地の買い手がどう判断し、何を信頼し、どんな不安を先に口にするかに合わせて、提案そのものを組み直します。これは、現地の市場を理解した人が現地語で実行し、必要に応じてネイティブの専門家が支える仕事です。
効果は小さくありません。海外展開に成功した企業が、成功の最大の理由に挙げたのは「信頼できる現地パートナー」でした。現地の言葉と市場をわかる味方がいるかどうかで、結果は大きく変わります。
翻訳は言葉を置き換える。現地化は、現地の買い手の判断に合わせて、提案そのものを組み直す。
2つ目は、国内で成果を出したやり方を、そっくりそのまま海外に持ち込むことです。「ネットはどこでも同じ」という前提が、根っこにあります。しかし現地では、買い手のいる場所も、調べ方も、信頼する情報源も違います。ラベルを貼り替えただけの計画は、気づかないうちにお金を溶かします。
たとえば検索です。国内ではYahooとGoogleを併用する感覚がありますが、海外の多くの市場ではGoogleが中心です。国内の前提のまま設計すると、現地の買い手が実際に使う場所からずれていきます。さらに近年は、買い手がGoogleより先にAIチャットで調べ始める動きも広がっています。
検索の先も同じです。国内で効いたSNSや媒体の組み合わせは、現地では買い手の注意が集まる場所と一致しないことがあります。大事なのは「魔法のチャネル」を1つ探すことではありません。現地がどこで会社を見つけ、どう見極めるか、その事実から組み立てることです。テンプレートの流用ではなく、現地のデータで答える問いです。
現地に合わせてチャネルを組み直すと、効率は大きく変わります。私たちのBtoB支援では、クリック率14.78%という、業界平均のおよそ2倍の成果が出たこともあります。適切な買い手に、無駄なく届くこと。それが、その先のすべての段階に効いてきます。
3つ目は、海外事業の担当者を静かに追い詰めるパターンです。国内の速い商談リズムのまま、関与者が多く、合意形成に時間のかかる海外の商談に向き合ってしまう。予測は遅れ、本社は「もっと押せ」と言い、その圧力が、海外の買い手にはいちばん逆効果になります。商談が止まるのは製品が弱いからではありません。リズムが、現地の買い方と噛み合っていないからです。
海外のBtoB商談は、関与者が多いのが特徴です。1人の意思決定者ではなく、複数の部門が関わり、社内で合意を積み上げてから決まります。国内の感覚で「そろそろ決まる」と見込むと、たいてい待たされます。詳しくは商談サイクルの記事で扱いますが、まず「長くなるのが普通だ」と受け止めることが出発点です。
ここで押さえるべきは、検討の大半が買い手の社内で進む、という点です。海外の商談を前に進めるのは、社内で御社を推してくれる担当者に、必要な材料を渡す仕事です。1人の決裁者に圧力をかける国内型の営業は、実際に結果を左右する社内の合意形成の場面で、できることがほとんどありません。だから押す。そして、押すほど商談は遠ざかります。
時間と人数さえかければ勝てる、というものでもありません。大企業でも海外で黒字化できているのは7割ほどで、中小企業では6割を切ります。規模や予算は、現地の買い方に合っていないやり方を救ってくれません。
検討の大半は、買い手の社内で進む。勝ち筋は、社内で御社を推す人に、勝つための材料を渡すことだ。
3つのパターンに共通するのは、能力の問題ではないことです。どれも、順番と設計の問題であり、国内の初期設定を、別のやり方が報われる場所に持ち込んだ結果です。だから、同じやり方をもっと頑張っても解決しません。海外の買い方に合わせた仕組みに切り替えることです。予算を使う前に根拠を固め、現地のデータでチャネルを組み、長い検討期間の中で毎週改善を重ねていく。
これが、私たちの「海外パイプラインの手法」と4つのフェーズの考え方です。まず基盤。予算を広げる前に、現地化・訴求・チャネルの仮説を固めます。次に獲得。テンプレートの流用ではなく、現地のデータでチャネルを組みます。商談化は、複数の関与者と社内合意を前提に設計し、御社を推す社内の担当者を支えます。育成は、長い検討期間を味方につけ、合意が固まったときに「選ばれる存在」になっておくための工程です。
毎週の改善サイクルが、差を積み上げます。長い商談は、四半期ごとの見直しでは間に合いません。毎週、現地の反応を読んで調整するチームが、月をまたいで小さな優位を積み重ねます。序盤に適切な買い手へ無駄なく届けられれば、その効果は最後まで効いてきます。
これは約束ではなく、再現できる実績です。あるBtoB企業では、リード獲得の商談化が大きく伸び、獲得単価も下がりました。別の事例では、海外向けの検索広告で、契約に至った収益が投資の5.2倍になりました。クライアントも段階も違いますが、考え方は同じです。現地の買い方に合わせて作り、長い検討期間を味方につける。
自社の海外向けの取り組みが、どこで取りこぼしているのかを、先に知りたい方へ。無料診断が、そのためのものです。現地化・チャネル・商談化の流れを、海外の買い方に照らして見て、3つのうちどれが最も大きな漏れになっているかをお伝えします。
予算より先に、根拠を。現地化・訴求・チャネルの仮説を固めてから、予算を広げます。
テンプレートの流用ではなく、現地のデータからチャネルを組みます。海外はGoogle中心の検索設計を土台にします。
複数の関与者と社内合意を前提に設計し、御社を推す社内の担当者に、勝つための材料を渡します。
長い検討期間を味方に。数か月にわたって役立ち続け、合意が固まったときに選ばれる存在になります。
多くは、体制や予算ではなく構造が原因です。現地化を翻訳で済ませる、国内のチャネルをそのまま持ち込む、速い国内リズムのまま合意形成型の海外商談に臨む。どれも国内では正しく見えて、海外では逆効果になります。JETROの調査でも、海外に出た日系企業で黒字化できているのは約3社に2社にとどまり、原因の多くは製品ではなく売り方です。
十分ではありません。これは最も多く、最も高くつく誤解です。翻訳が正確でも、現地の買い手がどう判断し、何を信頼するかに合っていなければ、商談の前に候補から外れます。現地化は、その判断の流れに合わせて提案そのものを組み直す仕事です。現地の市場をわかる人が現地語で実行し、必要に応じてネイティブの専門家が支える。翻訳の一項目ではなく、戦略として扱ってください。
現地によって答えは変わりますが、多くの海外市場では検索はGoogleが中心です。国内のYahoo併用の感覚をそのまま持ち込むと、買い手の実際の行動からずれます。さらに、買い手がGoogleより先にAIチャットで調べ始める動きも広がっています。チャネルは、思い込みや本社のテンプレートではなく、現地のデータから決めるのが基本です。
海外のBtoB商談は、複数の部門が関わり、社内で合意を積み上げてから決まるため、国内より長くなりやすいのが普通です。速い圧力型の営業は、その社内プロセスと噛み合わず、かえって商談を遠ざけます。合意形成のプロセスに合わせて設計し、御社を社内で推す担当者に材料を渡し、長い検討期間の中で毎週改善を続けることが有効です。詳しくは商談サイクルの記事もご覧ください。